インドの聖典に書かれている価値観というのは日本人の中にもいろいろな形で深く根付いています。多くの場合は仏教を介して、あるいは直接的な影響もいくつかあるでしょう。実際にインドに行きますと、日本人とまったく違うと思うところもあるけれども、すべてのものに精霊【魂】が宿るという考え方とか、何にでも手を合わせる感覚とか、日本人と似たところも数多くあるんです。
たとえば、インドにおける健康法というのは体を動かすことだけではなく心を鎮めることや呼吸を整えることでもあるという考え方があります。日本では禅の考え方がまさにそうで、インドと日本、東洋の二国間同士であるので、ベーシックな部分で非常に似通ったところがあるわけです。そのあいだに存在する中国でも同じですね。
ちなみに、インドで仏教の話をしても、仏教徒は別ですが、基本、一般大衆はまったく話が盛り上がらないんです。インド人の信仰の大半を占めるヒンドゥー教徒にとって、仏教というのは、具体的な定義はないけれども、仏陀というヒンドゥー教の聖者の一人と認知されています。逆に日本の仏の中には、ヒンドゥーの神様が「何とか天」という形でダイレクトに入ってきています。日本の弁財天はヒンドゥーのサラスワティというふうに。そう考えても、インドと日本はよく似ているのかもしれません。 |